「もう一度君と踊りたい」を観た ②

 

相変わらずネタバレ、個人的感想だらけなのでその点はご了承下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二回目の夜公演を観たことにより、前半と後半で対照的なセリフや構図が多いことに気付いた。また色んなアイテムが象徴する意味についても考えてみたり。

 

・りんちゃんとたーちゃんが生まれ育った家庭環境が対照的。不倫の末に出来た子供で離婚により金銭的に苦しい母親と2人暮らしのりんちゃん。エリート官僚の父を持ち沢山の習い事をさせられていたたーちゃん。ダンスを通じて対照的な2人は心を通わせる。

 

・高3の時に将来について5人で話し合う時に、夜9時待ち合わせで一番最初にりんちゃんが公園に到着、一番最後に現れたたーちゃん。RINDAを続ける条件として父親に大学合格を課せられたたーちゃんが「絶対に俺はRINDAは解散させない」と誓う。

・皮肉にもたーちゃんがプロ契約を結ぶというラインを送ったのがきっかけで、りんちゃんがRINDA解散を発してしまう。最後に5人で踊るために夜9時に待ち合わせをした時はりんちゃんが一番最後に現れた。

 

・5人全員でスーツを着ていき、事務所とプロ契約をしに行こうとする=夢みる子供から大人へのステップアップ。バイトで貯めた母さんへのプレゼント代をスーツ代にあてたりんちゃん。夢を叶えて大人への一歩を踏み出すためにスーツを着たが、ワールドトリガー(大人)には選ばれず、仲間ともすれ違い激怒したりんちゃんはスーツのジャケットをゴミ箱に投げ捨ててしまう=ダンサーの夢を捨てる。

 

・中学時代、シミーがRINDAに入りたい一心で「お願いします!入れて下さい!」とりんちゃんとたーちゃんに頼み込む。

ワールドトリガーとプロ契約を結ぶのを引き止めるりんちゃんに向かって「お願いします!辞めさせて下さい!」と土下座するシミー

 

・たーちゃんがRINDAとしてプロ契約することになり大学を辞める時には、俺がたーちゃんの両親に土下座して頼み込むよと冗談を言うりんちゃん

・たーちゃんが事故死したことを自分のせいだと思い、霊安室でたーちゃんの両親に土下座して謝るりんちゃん

 

・小学生時代、りんちゃんがダンススクールで他の生徒から嫉妬によりいじめられて、お母さんに買って貰ったナイキの白いダンスシューズを川に投げ捨てられた事件。たーちゃんはりんちゃんがこの事をきっかけにダンスを嫌いになって欲しくないと願い、りんちゃん以上に必死に靴を探した。そしてたーちゃんは無事に川に捨てられた靴を見つける。

・最初にたーちゃんが事故で死ぬ瞬間、りんちゃんはある夢を見た。あの日、川の木に引っかかっているナイキの靴を取りに行くたーちゃんの背中をりんちゃんが押した。すると、たーちゃんは川で溺れながら笑顔でバイバイと言ってくる。これはりんちゃんがダンスを続けるきっかけとなった"ナイキの白い靴"=最後に5人で踊ろうと提案したたーちゃんの気持ちをりんちゃんが拒絶。すると、溺れるたーちゃんがバイバイと永遠の別れを言ってくる。(=死)

 

 

結末を分かってからもう一度見ると切ない部分が多く、この後の展開をつい思ってしまい少し泣きそうになってしまった。

また、りんちゃんとたーちゃんがメインの物語ではあるが、他3人もRINDAには欠かせないメンバーである。3人について少し考えてみた。

 

 

・シミー(清水)      瀬口黎弥 

ダンスを習っていたが中学にダンス部が無いためサッカー部に所属。RINDA2人の大会でのダンスを見て、RINDA加入を嘆願。ダイナミックな動きのダンスが特徴で、性格も明るいムードメーカー。実際は他のメンバーより自分はダンスのテクニックがないことをコンプレックスに感じ、劣等感を持っていた。たーちゃんと共に、ワールドトリガーにプロ契約を持ちかけられたことで、劣等感に苛まれていた自分にとっては最良のチャンスだと考える。

 

きっと一番最初にシミーがプロ契約を結びたいからRINDAをやめたいと正直に言い出さなかったら、おがぴーもごっちんもRINDAをやめるという気持ちを言えなかっただろう。シミーだって本当は5人でプロになりたかったはず。ワールドトリガーに呼び出された時に気合入れて5人でスーツ着ていこうと提案したのはシミーだった。最後、公園に辿り着いたりんちゃんにお前は自信持ってワールドトリガーで成功しろと言われたことにより、シミーの劣等感への呪縛は解かれてホッとした。

 

 

・オガピー(小川)       堀夏喜

シミーと同じ流れでRINDAへ加入。しなやかなダンスが特徴。実家が洋品店を営んでおり、RINDA特製デザインのTシャツやタオルを作成。ダンスの練習場所がない時にちょうど良い公園を提案。父親が脳梗塞となり、ダンスか家業を継ぐか悩んでいたが、ワールドトリガーに契約を持ちかけられなかったため家業を継ぐことを決意。

 

オガピーは主張し過ぎず、シミーとはまた対照的なキャラクターだったがRINDAを大事にしている気持ちは強かった。中学時代、実家で作ったRINDAのTシャツや、ワールドトリガーのオーディション大会で実家の店の従業員が作ってくれたRINDAのタオルは、その度にRINDA5人の結束と絆を強くした。でも、夢は大事だけど家族や実家の店もそれと同じくらい大事だ。その上で、ワールドトリガーに選ばれず完全に心が折れたオガピーはりんちゃんの様にRINDAを続けることは出来なかった。最後にりんちゃんの自宅に中学時代と同じデザインで、大人になったサイズのRINDAのTシャツを送ってくれたオガピーの気持ちはRINDAへの愛の現れだった。

 

 

・ゴッチん(後藤)      木村慧人

1人だけ中学で違うクラスだったが、RINDA2人のダンスを大会で見てRINDA加入を希望。ブレイクダンスを得意とし、4人とはまた違ったダンススタイル。ワールドトリガーに選ばれなかった為、自分のしたいダンスを突き詰めるとRINDA脱退を決意。常に冷静だが、「少なく見積もっても〜」が口癖で結構な自信家。でも誰よりも現実を見ており、はっきり物事を言う。プロ契約の場でも5人中2人とは誰のことか怖くて聞けないりんちゃんに対してゴッチんはすぐに聞いたり、ワールドトリガーに選ばれず焦るりんちゃんに向かって「負けを認めろ」と現実を突きつける。プロ契約を結ぶか悩むたーちゃんにも、「りんちゃんの為を思ってRINDAを続けるならその優しさは罪だからな」と言い、この言葉の影響もあり、たーちゃんはプロ契約することを決意。

 

ゴッチんが私の中で一番掴めないキャラクターだと思っていた。RINDAに加入する時も自分が入ったほうがダンスの総合戦力が上がると発言したり、RINDAを抜ける時も自分のやりたいダンスでプロ目指すと決めたり、自分が得意とするブレイクダンスへの自信とこだわりは強い。でも、中学時代にりんちゃんとたーちゃん2人のダンスを見て、仲間と一緒に踊りたいと強く惹かれたゴッチんはRINDAの皆に自分から声をかけた。ゴッチんはきっと5人でプロになれるならRINDAでいようと思っていただろう。でも選ばれなかった現実を受け止め、今のままRINDAを続けるより2人のプロ契約の背中を押して、自分のしたい方を素直に選び、RINDAはこれで終わりにしようと言った。ゴッチんの現実を見据えた厳しい言葉はりんちゃんを追い詰めたが、こうやってはっきり言う人がいなかったらRINDAはこうして終われなかったとも思う。

 

 

 

ここからは個人の演技感想です。あくまで個人的意見

 

黎弥くんのシミー、福岡出身を活かし博多弁を盛り込んでいたのがとても印象的だった。シミー以外にも、ワールドトリガーの部長、オネエ口調なダンスの先生、お母さんやおばあちゃん、駄々をこねる子供と5役くらいコミカルにこなしていたが、演技力この中で一番あるんじゃないかって正直驚いた。黎弥くんのコミカルな演技でこの物語に笑う部分が加わり、ユーモアな場面が出来てバランスが良かった。あと、台詞を言う時に台本にのめり込まずに自然に前を見ながら話すのも凄いなと思った。同時に表情でも演技していたし話す時の間の取り方ももちょうど良い。これからもっと演技の仕事して欲しい………

 

堀夏は声がとても良かった。落ち着きのある声と話し方、主張し過ぎないけれど実はRINDAを強く愛しているオガピーのキャラクターに合っていた。たーちゃんを演じる堀夏を見てみたかった。それもきっととても似合うんだろうなと思った。なっちゃんの演技ももっと見てみたいし、落ち着いた声なのでナレーションとかそういう仕事もして欲しいと感じた。

 

慧人君も話す時に前や話し相手の方を実際に見ていたのが印象的だった。そして表情が役と一致している。タカシ兄ちゃんの時にはりんちゃんを楽しそうに見る目、ゴッチんとして厳しいことをメンバーに言う時には突き刺すような目をしていた。普段の慧人君とは反対の力強い口調が多くて、それも意外だったな。色んな役が出来そうな慧人君強い。

 

 

 

最後に樹君(りんちゃん)と慎君(たーちゃん)について。

樹君は最初少し早口だなと感じ、噛むことも何度かあり、初めての朗読劇かつ少ない稽古時間の中で緊張してるんだなと感じた。(主役で台詞量も多いし、噛むことを朗読の技術基準にするのはまた違うと分かっているが)

でも喋り方が最初は少し自信がないりんちゃんに合っていると思ったし、ダンスやたーちゃんと出会うにつれ、テンションが上がった樹君はまさにりんちゃんそのものだった。ワールドトリガーに行った帰り道、RINDAで仲違いし激昂している時のりんちゃんの演技は引き込まれた。基本的には台本に目線を落としているが、「RINDA解散」や「俺はもうダンスを踊らない」と宣言する大事なシーンで客席に顔を向ける。その時の目が本当に怒りと絶望に満ちていて、とても印象深かった。

母親との思い出を振り返るシーンで感極まって泣く樹君が美しく、自分自身と重ねているのだと分かった。

ちなみに朗読劇だが、後ろのスクリーンにモニターで役者の顔がアップで映し出される不思議な演出だった。なんでスクリーンに映すんだろうと最初思っていたが、生で演じる姿を見ても勿論いいし、スクリーンで細かい表情まで見ることが出来たのは結構良かった。

 

りんちゃんが最後公園に辿り着き、RINDAの4人に向かってそれぞれの道を応援しながら自分もダンスをやめずに歩き出すことを宣言し、また5人で集まろうと言う場面が本当に素晴らしい。高校生の頃までは「たーちゃんのいないRINDAはRINDAじゃない。たーちゃんがいないなら解散」と言っていたりんちゃんが、事務所のオーディションで優勝した時には「誰か1人でも欠けたらRINDAじゃない」と思うまでに5人のRINDAを愛するようになっていた。誰よりもRINDAを大切に思うばかりに、他の4人の気持ちのズレに気付かなかったりんちゃんが、最後には4人のことを見つめ直せるようにまで成長していた。

もう会うことはないとお互い分かっているのに、また一緒に踊ろうなと言い合うりんちゃんとたーちゃん。他の3人は5人で踊ることは2度とないことを知らない。最後お互いはそれぞれ反対側に歩き出し、りんちゃんは悲しい顔で振り返り、「またな」とたーちゃんに声をかける。たーちゃんもそれに笑顔で頷き、物語は終わる。その時の樹の悲しげな顔も印象的だった。

 

あと、どっちでも良いんだけど単純に気になったことがあった。靴の発音がく↑つであることが多くて、これは西の人だからなのか?と疑問だった。特に修正受けなかったのだろうか。ただ標準語の発音の時もあるので、どの靴の発音が正解か分からなくなる。ちなみに私は関東育ちなので標準語発音。

 

 

 

慎君は朗読劇大丈夫だろうかと勝手に余計な心配していたが、そんな心配やはり不要だった。

「主人公」を通して演技力が確実に上がったのを感じた。ニコニコしながら話す様子やりんちゃんのダンスを見て無邪気に興奮するところがとても可愛く、たーちゃんにぴったりだと思った。緊張する瞬間すらも楽しもうとする所、ダンスが一番上手いのにそれを鼻にかけない所、たーちゃんは不思議な人だ。でも、ダンススクールでりんちゃんの靴を川に捨てたいじめっ子たちに向かって一喝する場面では、泣きそうな顔で誰よりも真剣に怒っていた。いつも穏やかなたーちゃんが友達のためにそこまで熱くなれる。それが慎君に似合っていた。

今日の夜に死ぬと分かっていながら、今日という人生最後の日をもう一度繰り返すシーンで、慎君はボロボロ泣いた。うまく言えないけれど、とても自然に泣いた。それが本当に美しくて、気付いたら私も泣いた。私は自分が今日死ぬと分かっていたら怖くて仕方がなくて、前と同じように1日を過ごせないだろうなと思った。

当たり前の日常に感謝をし、来ないはずのりんちゃんを信じて公園にまた行く。それでも死ぬ時間が近付き、怖くてしょうがなくなった時にりんちゃんが公園に現れた。僕のヒーローが現れた!という時のたーちゃん、慎君の顔、泣きながらパァッて笑顔になる瞬間がとても眩しかった。りんちゃんが緊張して体が固まりダンスが踊れなくなった時は、いつもたーちゃんが一緒に踊ろうと背中を叩いて魔法をといてくれるヒーローだった。同じように、恐怖に震えるたーちゃんにとっても、りんちゃんはヒーローだった。

「大好きだよ」「俺も」と笑顔で言い合うりんちゃん、たーちゃんの表情も忘れられない。最後のダンスが終わった後、たーちゃんとりんちゃんはいつも通り、ハイタッチをしそのまま手を握り合う。それがとても力強く、2人の絆を本当に感じさせた。

 

 

 

あと龍友君が歌う主題歌がとても良いので、その曲が都度都度流れる度にグッときた。最後、その曲に合わせて5人で実際にダンスを披露するが、皆の全身全霊のダンスとても良かったな。配信されたらまた聴いてるうちに泣いてしまうんだろうなと思った。聴きまくります。楽しみ。

 

 

他にも色んなメンバーがこの作品を演じたということは沢山の色んなRINDAが存在したんだな。皆がこの作品に向き合って気付いたことは何だろうとつい考えてしまう。今日この日にこの5人のRINDAに会えたことは慎君のいう通り、彼らの思い出にも、そして私の思い出にも一生残り続けるだろう。

 

 

 

 

ちなみにこれはりんちゃんが初めてダンスしてるタカシ兄ちゃんに出会った時に踊っていた曲。

Gang Starr - Code Of The Streets

Code of the Streets

Code of the Streets

MV https://youtu.be/u1kwZUeog30

 

Gang StarrはGuru(グルー)とDJ PremierDJプレミア)によって1985年に結成された東海岸を代表する伝説的ラップデュオ。

かっこいい。1994年にリリースされたヒップホップダンスにぴったりな超有名曲。

タカシ兄ちゃんにこの曲を教えて貰い、田舎のCD屋には無いため取り寄せてまで手に入れたりんちゃん。

スーパーのおつかい帰り、たまたまいつもと違う道を通ったことでりんちゃんはタカシ兄ちゃんとダンスに出会った。人生案外そんなものなのもしれない。